研究概要
指向性・直進性の強い超音波によって直線上に音を届けるスピーカー(パラメトリックスピーカー)を用いる空間シェアリング技術や、その応用であるピンスポットオーディオ技術、また肌の振動を感知するピックアップマイク技術の研究を行っています。これらの技術を用いて音で空間を分割・共有するプロダクトの開発を目指しています。
研究メンバー
- 西浦 敬信(立命館大学情報理工学部)
- パナソニック株式会社
- 大和ハウス工業株式会社
- オムロンヘルスケア株式会社
研究内容
パラメトリックスピーカの原理
- 超音波を可聴音によって変調
- 振幅変調波は空気の非線形性で元の可聴音に復調
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振幅変調
- 振幅変調により可聴音成分を有する側帯波が発生
- キャリア波と側帯波の差音が可聴音として復調(キャリア波と側帯波の干渉によるうなりが復調)
- 超音波が存在する領域のみで復調するため再生される可聴音も鋭い指向性を有する
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振幅変調
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復調
極小領域オーディオスポット
振幅変調波を分離して放射 ⇒ 耳元一点でのみ可聴音を復調
- 振幅変調波のキャリア波と側帯波が可聴音の復調に必要である点に着目
- それぞれの成分を異なるパラメトリックスピーカから放射し交わる一点で可聴音を復調
極小領域オーディオスポットの応用例
本技術は空間上の一点に再生領域を構築するため、騒音対策や再生エリアの切り分けなどに積極的に応用できる。例えば美術館では、イヤホンを持ち歩くことなく展示物の正面にのみ音声を再生することが可能になる。また、オーディオスポットを複数構築することで大人用、子供用、英語案内などを分離して同時に再生することもできる。さらに、車の座席ごとに異なる音を再生、密接するデジタルサイネージの音を空間的に分離して再生することも可能に成り得る。
大人には一般的な説明、
子供には簡単な説明
ママはオンラインフィットネス、
赤ちゃんはお昼寝、子供はオンライン授業
サイネージごとに受聴エリアを設定
曲率と放射方向の自動制御化
- 曲率をコンピュータ制御可能な曲面型パラメトリックスピーカを開発
- 更に電動雲台を用いることで放射方向を自動制御 ⇒ 利用者の人数や利用範囲を基に再生エリアを自動制御
フレキシブルオーディオスポットの応用例
曲率を制御することで利用者数、利用用途に合わせたオーディオスポットを構築できるため、例えば利用時間が限られるダンススタジオを共有することが可能になる。また分離放射の技術を融合することで、耳元一点ではなく受聴者周辺で再生されるオーディオスポットを構築できる。
ボイスピックアップマイク
声の仕組み
我々が聴いている音声は、声帯の振動により声の基礎となる基音が生まれ、その基音が喉(声道)を通り口から放射される過程において調音され、口から声として放射されます。この声が空気を伝わり、鼓膜を振動させることで、我々は声として知覚することができます。 空気だけでなく喉周辺の筋肉や皮膚を媒介物として考えれば、直接喉の振動をよみ取ることができるはずです。この考え方を基にボイスピックアップマイクロホンは開発されています。
マイクロホンの特徴
空気の振動ではなく喉周辺の筋肉や皮膚の振動を読み取る技術であるため 周辺騒音の影響を受けにくく、小さい声でも検出することができます。 周辺環境の影響をより少なくするため、 図のように2重構造を取り入れています。皮膚に密着させる面には硬くて粘度の低いウレタンを使って声による皮膚の振動を的確にセンサーに伝え、 外気に触れる面にはやわらかくて粘度の高いウレタンを使ってセンサーに周辺騒音による振動が伝わらない工夫を行っています。
声を復元する仕組みと可能性
機械学習により喉周辺の筋肉や皮膚の振動から読み取った音をクリーンな音声に復元することで、一般的な空気振動によるマイクロホンと同じ音色を実現します。この仕組みを拡張するとつぶやき声やささやき声もクリーン音声に復元できるため、例えば、公共交通機関等の音声通話禁止エリアでも周囲に気づかれることなく音声通信可能となります。さらに一般 的なマイクロホンと異なりマスクの影響も全く受けないため、コロナ禍でも安心してお使いいただけます。
空間シェアリング技術の応用例
周囲の雑音を気にせず、
移動中でもミーティングに参加
外部の音を遮断しあなたの声をクリアに届けます
オフィスや教室の自席でも小さな声で会話が可能